民子賞受賞者と作品   <写真・略歴等は受賞時のまま掲載>

  • ● 第九回 大西民子賞・奨励賞(2008年)・秋葉祐美子

    • 秋葉裕美子
      秋葉祐美子・昭和42年誕生。仙台市在住。会社員。平成17年「波濤短歌会」に入会。
    •  
    • 作品「夜空へ放つ」詠・20首
    • ● 連休の初日の朝の駐車場わが車のみ残りて静か
    • ● すれ違ふ人を見てゐるわれもまたすれ違ふ人に見られて歩く
    • ● 次に目を開かば月曜は始まらぬ閉じぬかつかの間まよふ
    • ● 改札に浴衣姿の織姫が彦星待てり仙台七夕
    • ● 夕闇に浮き立つコンビニエンス・ストアのあかりに引かる夜盗蛾のごと
    • ● 携帯電話のひかりに顔を青白く照らされ歩む青年のあり
    • ● 眠れない日などないのについつられ「ナイト・キャップ」といふお茶を買ふ
    • ● どう見ても分けられなささうな食べ物も「半分こ」するがわが家の掟
    • ● 子とふたり笑ひとまらぬおしやべりに金曜の夜は土曜日となる
    • ● 寝に帰るだけになりつつある部屋の青き花瓶に薔薇の一輪
    • ● 伝票のすべり始める指先に早くも冬の乾燥は来る
    • 上司らは指名を思い出せぬのか肩書のみにお互ひを呼ぶ
    • ● 名刺さへ持たぬ私の肩書は「ウチの事務所の女の子」なり
    • ● ロッカーの扉にかかる鏡には残業疲れの顔が映れり
    • ● 寒き日に寄り添ひ歩くカップルの影を追ひ越す残業帰り
    • ● 雪の日の郵便受けに届きをり冷たくなれる請求書の束
    • ● 浴室の湯気のごとくもわが内にこもれる毒気 夜空へ放つ
    • ● ほどかれてまるめられたる黄の毛糸帽子の頃のうねりを残し
    • ● 柔らかく暖かきふとんを跳ねのける勇気の出ないマイナスの朝
    • ● いくつかの願ひを持てばイブの夜の心に小さき靴下さげる

波濤短歌会事務局
● 所在地・〒167-0033 東京都杉並区清水1-1-13   TEL ・03-3398-5700