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● 第十一回 大西民子賞・奨励賞(2010年)・小川結花
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小川結花・昭和34年誕生。茨城県水戸市在住。地方公務員(教諭)
- 作品「力のかぎり」詠・20首
- ● 黎明を音なく降れる初雪にひとつ命はリセットさるる
- ● 揺るぎなきものは見えねど今日もまた東より尊き日は昇りくる
- ● 霧深き中を歩めど真実は確かに足の底(そこひ)に満てり
- ● 空蝉のおぼつかなきを包み込む夕日は掌拡げた形に
- ● 入院の父のめぐりは少しづつ変はりてゆきぬ書籍の減りて
- ● 闘病の長きに耐ふる父の目に映りてゐるは夢か現か
- ● 半年を病院に過ごせる父の夢いつも戦地を駆けゐしといふ
- ● 父母と偕楽園に遊びゐし記憶は梅の香にあふれくる
- ● 伐られたる枝より咲ける梅白し 恨み哀しみ痕跡もなく
- ● 満開の山茶花の次は白梅と一枝なれども父に届けむ
- ● 病床の窓より見ゆる街の雪 哀しき白を際立たせ降る
- ● 見舞ひ来て互ひの今日を語らへば街はいつしか黄昏のとき
- ● しがらみに縛らるるわれを見下ろして烏はことさら高らかに鳴く
- ● 満月の形に口を開きつつ金魚は金魚の悩み吐き出す
- ● 父のため捜しあぐねし鮎並び店先に届く春の光は
- ● 藻の香り満つる若鮎そり返り跳ねる形に串を打たれゐる
- ● 失いし味覚のふいに戻れるか命もろとも若鮎を食む
- ● 隠されし秘密を自らあばくごと桜の花はひといきに咲く
- ● 直線に生きる勿れと教へきてしだれ桜の満開に会ふ
- ● 罪ぶかき人を見守る空海の像にもかかるしだれ桜は
