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● 第二十五回 大西民子賞・奨励賞(2024年)・片山三知子
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片山三知子・昭和15年10年29日に誕生。神戸澪標短歌会所属。
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- 作品「異星の人と」詠・30首
- ● 真似事の親孝行とはじめたり母の生きがい歌会への送迎を
- ● ケセラセラ鉛筆なめなめ歌作り 飴と鞭との母に騙され
- ● 角膜の傷で視力の衰えし母が訴う切符の買えぬと
- ● 続けよと励ましもらう全国大会(たいかい)に妙薬一服もられし気分
- ● 鬼、悪魔、夜叉にもなりて連れてゆく母に乳癌の疑いあれば
- ● ゆくりなく錯乱の母に叩かれて「好きよ、好きよ」と頭撫でやる
- ● 不思議なる絵の具で壁に描きたり鑑賞せよと命じているか
- ● 絵を褒めて泣きつつ母をあやしおり三知子よ泣くな涙よ止まれ
- ● 車椅子に移さんとして母を抱くかかる重さは不孝の咎か
- ● 散る花のもとに留め置く車椅子母はひととき仏となりぬ
- ● 妹の脳の手術に朗らかでよかった認知症(にんち)でよかった
- ● 七音の足らざる歌はそのままに母の乳癌爆発寸前
- ● 水さえも飲み得ぬ母が会話せり宇宙語つかい異星の人と
- ● 土踏まぬ日々を過ごせる母なるに看護帽子(ナースキャップ)を床頭台に置く
- ● 婦長なる矜持もちいし母なれば別れの紅をきりり引きやる
- ● コスモスはこぼれ種より芽吹きたり測量杭のうたれし畑に
- ● 明日のある余生と信じ夫と埋む球根あまた春を待ちいる
- ● 余生という地図なき道を歩みゆく夫との一歩おろそかならず
- ● 「認知症」との夫の診断うけいれんときに正直ときに残酷
- ● かわいそう 同情なんていりません老いと向き合う覚悟を賜(たも)れ
- ● 紙パンツ着けるを拒む夫なればおねしょシーツを隠しておかん
- ● 物置の屋根で夫は盆踊り戦火おさめるよき策なりと
- ● 子や孫に労らるる夫なりき鉄道ひとすじ愚直に励みき
- ● 「二度童子」は『波濤』に見つけし言の葉よ認知症(にんち)の夫を言い当てており
- ● 独身は生き方也と娘(こ)の主張 違和感あれど半分諾う
- ● 澱(おり)となる心の憂さを短歌(うた)にして口笛吹けば空は晴れたり
- ● 明日へと誘う風の身に染みぬ 母よわが母努めて生きん
- ● とどこおる雲でいいかと母に問う口元動くも声は聞こえず
- ● 逃げるのは卑怯なりしも原罪に触れず生くるは至難と思う
- ● 街の灯の濡れてせつなし何なさん能登の地震やガザの戦禍に
